私はそのため、以前(『中小企業は進化する』)、製造業の典型としての金属機械産業の規模別の従業員の賃金を、労働組合のJAMの内部資料によって比較したことがある。
その結果明らかになったことは、大卒採用の勤続15年、37歳という平均値の勤労者の「規模別格差」は、99人までの企業と3000人以上の企業とでは20%の開きがあった。
たしかに中小企業の方が低いのである。
しかし、300人までの企業と3000人以上の企業との比較になると、せいぜい10%の差でしかなかった。
またそこに別の条件、つまりそれは属性の周辺材料なのだが、中小企業には細かな職務・職階がないこと、転勤がないこと、通勤距離が短いこと、などを考えると10%〜20%という「格差」がリーズナブルなものと思えたのだった。
人が働く上で最も大切なことこのことについて同じ『中小企業白書』によると、大企業の平均賃金は38・3万円で中小企業は29・8万円である、と「平均化」し「格差」を示しながらも、多様な給与額の分布がみられることを紹介している。
それによると、中小企業のなかの約20%が大企業の平均賃金を上回っている、という事実が明らかになっている。
その理由はとてもよくわかる。
経済産業省と中小企業庁による「商工業実態基本調査」をみると、10%以上の売上高営業利益率を上げているパーセンテージは、圧倒的に中小企業の方が高いからである。
とくに20人以下という小規模企業になると、30%の企業が10%を超える利益を上げている。
ただし利益が5%以下あるいは赤字、というのも圧倒的に中小企業が多い。
それに対して大企業の60%は利益率5%前後のところに位置している。
大企業は平均値で語れるが、中小企業は平均値では語れない、という理由はここにある。
なお、「商工業実態調査」の数字は1998年のものだが、この時期は北海道拓殖銀行や山一証券が破綻するという最悪の景気動向だった。
ということは景気拡大期ならこの数字はもっと良い数字に集計されるということである。
次に働く上で賃金と並んで大切な「仕事のやりがい」を調べてみよう。
同じ企業で勤続年数が十年以上の正社員を対象としたものだが、わずかではあるが中小企業の方が仕事のやりがいは向上しており、大企業は低下しているのがわかる。
そして、その「やりがい」の細かな項目をみると、「達成感」や「社内での評価」といったことでは大きな差はないが、見逃せないのは「会社内の地位(昇進)」に関する考え方である。
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